「しゅんかしゅんか」でも人気のさといも、そら豆、かつお菜、祝蕾(しゅくらい)など少し珍しいものも含め多様な野菜も栽培している。
ボランティアの方々へ、お土産の野菜はもちろん、おやつに貯蔵した里芋を用意するなど、季節に合わせたおもてなしを大切にする姿が印象的でした。
梨のプロフェッショナル
今回は、多摩地域でも有数の梨農家である、国立市谷保の佐藤英明さんを訪ねました。
谷保天満宮から徒歩5分ほどの多摩川のハケを下ったあたり、住宅と水田が点在する田園風景が色濃く残る地域にある圃場は、接ぎ木の名人であったお祖父様が昭和初期に水田を梨園へ転換されたそう。
かつてはこのエリアに数十軒あった梨園も、今ではたったの二軒にまで減ってしまいました。
英明さんが梨の技術を受け継ぎ、農業の世界に飛び込んだのは35歳の頃。
先代からの知恵も丁寧に受け入れながら、時代の変化に合わせて新しい技術も積極的に導入してきました。
「都市農業を一人でも多くの世代に広めたい。理解者を増やしたいんです」と研究熱心な農家さんです。
「東京おひさまベリー」の栽培
そんな英明さんが、昨年より栽培に取り組まれている東京都オリジナル品種のイチゴが「東京おひさまベリー」です。
イチゴの主流はハウス栽培ですが、こちらは屋外向け。実がかたく果肉の中がしっかりと赤いため、生で食べるのはもちろん、果肉の色味を活かしてジャムなど加工にも非常に適しているとのこと。
昨年から東京都内で複数の農家さんが栽培を始めたのですが、英明さんの圃場では240株、累計収穫量はおよそ100kg超えと、他の農家さんと比べても二倍以上の収量になったのだとか!
このように栽培当初から安定した収量を実現できたのは、これまでの梨栽培で得てきた果物の栽培についての多くの知見を活かしながらさまざまな工夫を施したから。
「果実づくりは土づくりが肝心」と、自家製の植物性堆肥をたっぷりと使い、肥料分は最小限に。「人間と同じで、食べすぎては病気になる。少し腹が減ったくらいがちょうどいいんだよ」ということで、窒素分は少なめ。とはいえ、十分に栄養が行き渡るよう、特にリン酸の量には気を遣い、根っこの伸びる長さを想定しながら土をつくっています。
都市の農業を守り受け継ぐ
東京おひさまベリーの全体的な栽培管理は英明さんが行っていますが、日々の栽培から収穫、パック詰めは全て後継者である英明さんの娘さんが担当されています。
娘さんは、英明さんと同じく東京農業大学を卒業後、現在は全農の職員として活躍中。「娘が幼い頃から畑の作業を手伝わせる中で、父の背中を見せて後継者としての育成を続けていた」と振り返る英明さん。
このことからも分かるように、都市の農地を次世代に繋ぐことへの意識がとても高いのが印象的でした。
英明さんは他にも、毎年地元の幼稚園や保育園の子どもたち、小中学校、農業高校の生徒さんなどを中心に1,000名を超える農業体験を受け入れています。また、梨園に訪れるボランティアさんも、今年だけですでに50名以上が参加。
都市農業を多くの世代に伝えたいと、後世に受け継ぐ熱い思いが伝わってきました。
今年も順調に生育中の東京おひさまベリー。東京都全体で見ても、まだまだ生産農家は少なく貴重なイチゴです。
「くにたち野菜 しゅんかしゅんか」の店頭に並ぶのは、5月のゴールデンウィークが明けてから、中旬から5月いっぱいくらいまでがピークの見込みです。
昨年もお楽しみいただいたみなさまも、今年初めて出会うみなさまも、お日様の恵みをたっぷり浴びた東京産の新しいイチゴをぜひ味わってみてくださいね。