先代から続いてきたほうれん草の栽培を大切に受け継ぎながら、真夏以外通年での小松菜栽培にも着手。
またトウモロコシののもぎ取りも拡充するなど、地域のニーズに応えながら市民に喜ばれる農業を目指している。
さらに近年では、国立市の農家仲間とともに「コサエルくにたち」を設立。激辛唐辛子「辛富士」と鷹の爪を栽培し、唐辛子「辛すぎて谷保(やぼ)」の商品化と普及活動にも力を入れている。
今年の冬は寒い!この寒さにあたることでぐっとおいしさを増すのが冬野菜です。
今回は、国立市谷保「中屋農園」の農園主である遠藤充さんを訪ね、「しゅんかしゅんか」でもファンの多い農園自慢のほうれん草についてお話を聞きました。
少品目多量栽培
充さんは、小平市に生まれ、中学生の頃に国立市へお引越し。
子どもの頃は、たまに遊びに行くご両親の実家で畑や田んぼを目にすることはあっても、専門学校を卒業されるまで農業とはほとんど無縁の人生を歩まれてきました。
会社勤めをしていた頃、実家が農家である奥様・嘉(よしみ)さんとのご結婚を機に、2009年に婿入り就農。7〜8年前には先代であるお義父様・常臣さんから農園主を任されるようになり、現在は充さんが主に畑での作業を、常臣さんと嘉さんが荷づくりなどの作業をされています。
中屋農園では、都市農業の特徴の一つである「少量多品目栽培」とは真逆のスタイルがとられています。
夏にはトウモロコシ・ピクニックコーンと枝豆、そして冬にはほうれん草と小松菜のみを栽培。特にトウモロコシは、毎年6月下旬から7月の間もぎ取り体験と庭先販売をあわせて、多い日には1,500本を売るという人気ぶり!
今は、もぎ取りを含めて、しゅんかしゅんかや地元のスーパーなどの直接取引が中心となり、市場出荷はかなり少量となりました。
農園自慢のほうれん草のこと
就農時に通った農業試験場では、栽培方法を教わるだけでなく、野菜ごとにたくさんの品種を育て生育の違いを研究する機会があったそう。
近年メインで育てている「ハンター」も、その頃に出会ったお気に入りの品種。味の良さと、ほうれん草らしい剣のように尖った葉の形が特徴で、今年は品種をハンターのみに絞り、50a(約1,500坪)を栽培中です。
中屋農園のほうれん草といえば、肉厚な葉が大きな特徴!
その秘訣は、十分に耕され、堆肥と混ぜ合わせられたやわらかい土。
毎年9月から始める種まきの前には、5回ほどトラクターをかけて畑に空気を入れ、根が張りやすい状態を整えます。
堆肥には、あきる野市の牧場から仕入れる牛糞などを用い、フカフカと気持ちいい土づくりを大切にしています。
しっかり根が張れる環境をつくることで、栄養が十分に行き渡り、旨みのある肉厚なほうれん草が育つのです。
おいしさを突き詰めたい
代々続いてきた少品目多量栽培を受け継ぐ充さん。
他に育ててみたい野菜があるか気になり聞いてみると、「うーん、今は無いかも。新しい野菜をやるよりも、今やっているものがさらにおいしくなるように突き詰めたい。『中屋さんで買えば間違いない』と言ってくれる人たちの気持ちに応えたいです」と、職人らしい顔つきで話してくれました。
また、充さんは、そう遠くない将来、農園でスタッフを雇用する未来も少しずつ描き始めています。
「都市農業の課題はいろいろあるけれど、ただ農地が残っても仕方ない。そこで農業に携わりたいと思う人を増やしていかないと、衰退する一方です。うちも今は家族だけでやっているけれど、いずれは、(ボランティアではなく)ちゃんと雇用して働いてもらうことで、作物の質や生産量を落とさずに続けていける仕組みをつくりたいと思っています。そういうニーズは、うちに限らず多くの農家が持っているんじゃないかな」と話してくれました。
毎年10月から翌4月ごろまで入荷する中屋農園のほうれん草。中でも、寒さにあたる今の時期は、特に甘みがのりおいしさの本領発揮!
充さんは、「子どもがよく食べてくれるから、ツナマヨで和えるのが好きです」と教えてくれましたよ。
旬ど真ん中の肉厚ほうれん草、ぜひたっぷりとお楽しみください。