近年は、西洋野菜の栽培にも積極的に取り組まれている。
手間ひまがかかるうどの栽培については「一番下の息子が好きだから残してやりたい」と笑って話す。
日光がまったく入らない地下室。そんな場所で育つ野菜があるのをご存じですか?
立川、国分寺、小平に至る五日市街道沿いで、古くから作られてきた伝統野菜「東京うど」。
その作り方は実に特殊で、深く掘り下げた地下室、通称「うど室(ムロ)」で育てられます。
今回、うど室のなかを探検できるということで、取材班は嶋﨑農園へ向かいました。
(嶋﨑農園へ着くとまず目に入る「東京うど」の大きなサイン)
神秘的なうど室に潜入!
まず最初に、火を灯したロウソクをゆっくりと室の中に入れていきます。
これは室内に酸素があるかどうか確認しているのだそうです。いきなり探検感満載…!
安全を確認したのちに、ハシゴで3メートルほど地中に下りていきます。
ハシゴを下り切ると、奥行き4メートルほどの地下室が四方に伸びています。ここはかつて、サツマイモの貯蔵庫としても使われていたそう。
(うど室へ繋がるハシゴを恐る恐る下りていくと…)
(そこには真っ暗な世界が広がっていました!ワクワク…)
ニョキニョキと真っ白なうどがたくさん並んで生えている様子は、まるでどこか異世界に来たかのよう。
天井は低く、嶋﨑さんも普段の作業は正座の状態でするのだそうです。
しかも、中に敷いてある土は毎年入れ替えるのだそう。想像するだけでたいへんです。
たいへんな手間ひまで育つ
東京うどの栽培がたいへんな理由はほかにもあります。
うど栽培は、まず春先に、種株をトラックいっぱいに積み込んで、高冷地である群馬県まで運んで植え付けます。
そして秋になると、高冷地で栽培されていた根株を掘り出して、国分寺にUターン。これをうど室に植え発芽させます。
根株を掘り出すのはものすごい重労働だそうです。
(これが、東京うどの根株。包丁で分割して群馬県の畑に植えて生長させます)
うど室のなかは真冬の時期でも温かく、15度を下回ることはないそうです。
群馬県との寒暖差で、春だと勘違いしたうどがニョキニョキと芽を出してくるわけですね。
うど室に入れて1ヶ月ほどで出荷となります。
何よりも早く春を告げる
うどの出荷のピークは2月から3月。
古くから栽培されている伝統野菜として「江戸東京野菜」にも認定されている東京うどは、粋な江戸っ子が走りものを重宝したことからその栽培が始まったと言われています。
せっかちな江戸っ子は、山野で採れる山うどが出てくるのを待てなかったのですね。
何よりも早く春を告げる野菜。それが東京うどです。
かつては国分寺市内でも100軒以上の農家がうどを栽培していたそうですが、今では7軒だけとなりました。
地元の名産品として、主に贈答品として出荷されています。
「うどのおかげでほかの野菜に十分時間をかける余裕がなくなっちゃうのが悩みですよ」と苦笑する嶋﨑さん。
それでも栽培を続ける理由をお伺いすると、「一番下の息子がうどが好きって言うから残してやりたくて」と笑顔で答えていただきました。
嶋﨑さんのオススメは、一口大に切ったうどをシンプルに味噌マヨにつける食べ方。
室の中で日光に当てない軟白栽培だから、アクが少なく柔らかいため生のまま楽しめます。
シャキッとした食感と優しい春の香りをぜひお楽しみください。
【おまけ】
うど室から外に出ると、そこには青空が広がる気持ちいい畑。
(近年嶋﨑農園が積極的に作られいている西洋系野菜たちも色鮮やかに)
(嶋﨑さんのご長男で農園11代目の貴之さんにもお会いできました)
今回の取材は、親子向けの農いく!のきょうだい的プログラムである、大人向けの「イートローカル探検隊」隊員が担当しました!
イートローカル探検隊では、毎月さまざまな食の生産者を訪ねる機会を提供しています。
ご興味ある方は、ぜひ一緒に、多摩地域に隠れたおいしいものを巡りましょう♪
https://e-tan.tokyo/