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立川市柏町・高橋尚寛さん

2020年9月28日

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立川市柏町にある高橋果樹園。
今月の「農いく!」では、ここの園主である尚寛さんを先生農家にお迎えし、東京で育つ様々な果物についてお話をしていただくことができました。
今回は、事前の打ち合わせと当日のお話の内容から一部ご紹介しながら、高橋果樹園で育つ果物の魅力をお伝えできればと思います!

尚寛さんは就農されて今年でおよそ15年になります。
実はここ高橋果樹園は、尚寛さんが後を継ぐ以前は野菜や植木をメインに栽培してきた場所でした。
本格的に就農される以前、野菜と果樹の両方について勉強をしていた期間があった尚寛さんですが、その頃に果樹栽培の魅力にハマったと言います。
「果物は野菜以上に、味の違いが分かりやすい。そして、この辺りでは、野菜をやる農家と比べて果樹をメインにやる農家は圧倒的に少ない。東京産のおいしい果物、しかも色々な種類を作って提供できればとても喜ばれるんじゃないか、と思ったんです」と、後を継ぐと同時に果樹をメインに切り替えることを決めたきっかけを話してくれました。
スタートは、ブルーベリー栽培に始まり、今ではイチジク、桃、ぶどう、柿、キウイと高橋果樹園の畑には種類豊富な果物が育っています。

まずは、今回農いく!でも収穫を体験させていただいたぶどうのお話から。
900平米あるハウスで高橋さんが手がけるのは4種類。シャインマスカット、藤稔、クイーンニーナ、ピオーネです。見た目の色はもちろん、味や香りも品種ごとに様々な特徴があります。

今年は、7月の長梅雨(日照不足)からの8月の雨不足の影響で、ぶどうの栽培も中々難しかったと言います。
日照不足はぶどうの色づきに影響が大きく、特にピオーネやクイーンニーナについては「例年よりもぶどうを“日焼け”させるくらいの気持ちで、対策をしています」という高橋さんの言葉が印象的でした。
例えば、ぶどう栽培では欠かせない工程である袋がけ。袋がけをする理由には、甘い香りにつられてやってくる虫や鳥から房を守る目的や、病気や強い日差しから守る目的があります。
この袋は、少しずつ紙の厚みが異なるものがあるそうで、今年はピオーネとクイーンニーナについては少し薄めの袋を使って、あえて日照をなるべく与えることを意識されたそう。

他にも、こんな風に反射板のような働きをするような仕立てもされていました。

これは打ち合わせで8月半ばに伺った際の写真で、高橋さんは一部袋を外して見せてくれながら「やっぱりまだまだ色が乗らないんですよ」と仰っていました。
それが、9月半ばに行った農いく!当日には、もう綺麗に色づいた房がほとんどに!高橋さんの工夫と手間ひま、そして果物の生命力をひしひしと感じました。

次に、イチジクについて。
ぶどうの栽培よりも前からイチジク栽培を始められた高橋さん、今年で12〜3年ほどになるそうです。
ハウスの前に来ただけで、ふわぁ〜と芳醇な香りがしてきました!
イチジクはとても繊細で傷みやすい果物。そのため、長距離輸送にはあまり向かないのです。
東京産の強みはまさにそこ。畑と食卓の距離が近いため、樹上で完熟し食べごろを迎えたものを出荷しすぐに食べてもらえるこの距離感は、イチジク栽培と実はとても相性が良いのですね。

最後に、梨の木を見せていただきました。品種は、よく耳にする「幸水」と「豊水」です。

あれ?木がまだ小さいですね〜。
そう、実は今年の3月に植えたばかりの梨の木。可愛らしいですよね♪今はまだ小さな木ですが、早ければ来年には少しずつとれ始めるようになり、再来年には本格的な収穫を迎える見込みとか。
高橋さんは今回「根圏制御栽培」という栽培方法を採用されています。

これは、地面と隔離した盛土に果樹の苗木を植え付け、それぞれの樹の成長に合わせた養水分管理を行う栽培方法。
ある木で病気が起こってしまっても他の木に移らないことや、木ごとを観察して適切な栄養を与えることができるため栽培管理がしやすくなり安定した収量を見込めることなどのメリットがあるそうです。
この栽培方法を間近で見させてもらったのは初めてでした。
そして、綺麗に管理された梨の畑。来年、再来年と今小さなこの木がどんな風に成長するのか想像しながらワクワクしてしまいます!

高橋果樹園では、経営者である高橋さんの他にも、数名の正規スタッフを雇用して農業に取り組まれています。
これ、実はこの辺りでは結構珍しいのです。地方のいわゆる「産地」と呼ばれるようなエリアと比べると畑が広くないこともあり(もちろん多摩エリアでも農家さんごとに広さはそれぞれです)、ご家族だけで、もしくは数名のボランティアさんを受け入れてやられている方が圧倒的に多いのですね。
そんな中、高橋さんは「東京で農業をやるからには、そういう(農業に関わる人を育てる)役割もこれからはとても必要になってくると思うんです」と話します。
また、この辺りでは珍しい果樹園の経営について伺うと、「野菜と違って、果物は毎日食べるわけじゃないでしょう?そういう中でどれだけ多くの人に食べてもらえるのか。果樹だけで営農するのは、そういう経営的な難しさはあるけれど、そこを毎年考え続けながらやるのもやっぱりおもしろくて」と笑顔で答える高橋さんが印象的でした。

高橋果樹園では、収穫のシーズンになると直売会や収穫体験も受け入れています(年ごと生育状況等により変動あり)。
素敵なホームページもありますので、ぜひ覗いてみて、おいしい果物が育つ東京の果樹園に足を運んでみてくださいね♪
https://takahashi-fruits.com

text:Megumi Maruyama

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