庭先の無人販売で人気の梨は、「ここ以外の梨を食べられなくなるの!」というファンも多い、地域密着型の農園。
一度食べたら、他の梨は食べられなくなる。
立川市栄町にある「木村園」は、みずみずしく新鮮な梨で多くの人を魅了しています。
今回は園主である木村隼さんを訪ね、地域に愛される梨についてお話を伺いました。
梨でお客さんを笑顔に
木村園は、江戸時代から続く歴史ある農園。
現在は梨をはじめ、ブルーベリー、スモモ、柿、栗、キウイフルーツなど幅広い果樹の栽培を手がけています。
果樹を始めたのは、隼さんのおじいさまの代からとのこと。
もともと、高校卒業後にはパン職人を目指し専門学校に通われていた隼さん。それでも、おじいさまやご両親の背中を見てきた中で、自分が後を継ぐことを決意。
農業試験場で一年間果樹栽培を学び、農園に入られるようになったのが25歳ごろのことでした。
(木村園で実る、キウイフルーツや柿。収穫まではまだ少し時間がかかるとのことで、楽しみです!)
現在木村園では、幸水や豊水をはじめ約7種類の梨を栽培中。
中でも、市場にあまり出回らない「楽山(らくざん)」は、さっぱりとした甘さで大人気だそう!
隼さんは、梨を栽培するやりがいを「お客さんの笑顔が直接見れること」だと話してくれました。
コロナ禍以前は有人販売を行っていましたが、今は無人販売に切り替えられています。お客さんの顔を直接見ることは減ってしまったけれど、自分の梨を食べて幸せな気持ちになってもらえるよう、今日も目の前の梨に真摯に向き合います。
(取材日は、今シーズンの出荷開始二週間ほど前。すべての梨が丁寧に袋がけされていました)
樹上完熟、新しい栽培方法
栽培での工夫を伺うと、「お客さんに一番おいしい状態で届けること」だと話してくれました。
そのためには何よりも、収穫時期の見極めが重要!
果物は、輸送期間を考慮し未熟なうちに収穫されることが多いのですが、木村園の梨は近隣で消費されるためその必要がありません。
そこで、「樹上完熟」といって、本当に熟れるまで樹に付かせておく。これが、シャキッとみずみずしく甘みの強い梨の提供を可能にします。
今年で就農歴10年になる隼さん。ここ1〜2年ほどで、梨をそっと触っただけでおいしい適期を見極められるようになったそう。
「ようやくここまで来ましたね。果樹は一年に一度しか巡ってこないので…」と話します。毎日真剣に向き合うからこその変化・成長なのですね。
そんな隼さんは、ここ数年で、「根圏制御栽培」という新しい栽培方法にも挑戦しています!
この方法による梨の収穫は今年が初めて。
これは、本来縦方向や横方向に伸長する根の動きや働きを物理的、空間的に制限する栽培方法。それにより、樹の病気への対処がしやすくなったり(他の樹と土壌を共有していないため病気が拡がりにくい)、実がたくさんなるなどのメリットがあります。
立川で梨をつくる農家3名で知識・ノウハウを共有しながら挑戦されているそうで、このような農家同士の横のつながりは、勉強にも、良い刺激にもなるから非常に大切だといいます。
(根圏制御栽培法で育てられている梨。年々樹が大きく伸びている姿に感動)
(樹ごとに独立している様子。梨は根っこが浅く広範囲に伸びやすいため通常は樹ごとの間隔を広く取らなければならないが、この栽培方法だとより多くの樹を同時に育てられるというメリットがある)
地域とともに
一度食べた人を虜にする木村園の梨。
それでも隼さんは「満足することはない」と語ります。
「この先も、地域密着で、少しでもおいしいものを提供したい。いつか、自分の孫にあたる代まではここ(木村園)を残したいなと思います」と熱く真剣な眼差しで話してくれました。
木村園の梨は、8月中旬から10月中旬ごろまで、品種をリレーしながら販売を予定しています。
ぜひ木村園の無人販売所をはじめ、「にしこくマルシェ しゅんかしゅんか」、「のーかるバザール」にも足を伸ばして、自慢の梨をご堪能ください!
(木村園の直売所は、「立川産ですよ!」ののぼりと、可愛らしいイラスト付きの看板が目印♪)