東京で農いく!を
やることの意味
―アニメとかって全部人に作られたものじゃないですか。
それは畑もそうなんだけど、その「度合い」が低いというか
私は地方出身で地方育ち、渋谷さんも地方のご出身ですよね?
東京で子育てをする、あるいは東京で育つってどういう感じなのか私はなかなか想像しにくい部分があるんですけど、東京における子育ての中で、農いく!はどんな場所・機会になっていると感じますか?
実は、あまり東京だからとか関係ないかもなって最近思っていて。どこへ行っても同じような課題を持っているような気がします。 “自然”という、自分たちがコントロールできない場所に行く経験って、地方でもあまりできないんじゃないかな?まあ自分が子どもの頃は空き地とかあったけど、今はますますそういう場所がなくなっていて…自分でコントロールできない自然的なものが残っていてそこで遊ぶという経験自体は意味があるんじゃないかと思う今日この頃です。
なるほど。
あと、野菜って最終的には完全にはコントロールできないじゃない?形とか。あとは畑だと、土の中に何がいるかとかコントロールできないじゃないですか。反対に、公園へ行くとやっぱり遊具で遊ぶよね、という。なんというか、そういう場があるのはいいなって思うな。
例えば、アニメとかって全部人に作られたものじゃないですか。それは畑もそうなんだけど、その「度合い」が低いというか。枠組みは農家さんが作っているけど、最後の最後はどうなるかわからないという場所。そういう場所で遊ぶ経験は、直感的にはすごく大事なんじゃないかなと思っている。そういうおもしろさを実感しないまま幼少期を過ごす子どもは、ちょっとさみしいなあって思ったり。抽象的ですが…。それは東京だけじゃなくて、現代で子育てしているとそういう場が少ないような気がする。
それって、あの秋じゃがいもシリーズの畑で言ってた話と近いですよね。
そうそう!だからもっと農いく!に頻繁に行けるといいなあって思ってる。農いく!もやっぱり作られた場所、設定された場所ではあっても、その中ではいろんなことが起こるじゃないですか。それは公園の遊具とは違う気がするっていうことかな。
私は東京で生まれて育ったけれど、子どもの頃はやっぱり公園や、小学校に上がってからはほとんど毎日校庭か児童館で遊んでた記憶があるかなあ。今、親として、子どもを見ていて思うのは、この春から小学校に上がって放課後は毎日当たり前に学童に行き、いつも近しいメンバーと同じような活動をして過ごしていて。別に本人は何も言わないけど、親的にはなんかもう少しいろんな体験ができたらいいかなあって。小さいうちは吸収力もすごくあるし、楽しいんじゃないかなあって思ったりもする。だから、一つの居場所として、農いく!が機能していて。畑が舞台で、毎回違う家族がいて、違う農家さんがいて、違う野菜に出会えて、ここに来れば違うことだらけ!そういう、自然といろんな刺激がもらえる場に連れていけているのは、農いく!を始めて良かったなあって思います。
しかも、なんか強すぎない刺激っていうのは良くない?僕はそれがいいんじゃないかと思ってる。多分、戦隊モノのアニメは刺激が強すぎるんだよね…それもいいんだけど、そればっかりだと強すぎる。農いく!でもらえる刺激って、子どもが自分で掴める程度の刺激じゃないですか。なんていうか、その刺激をきっかけにさらに自分で発展させられるくらいの。そういう感覚があるな、個人的には。
そうですね。これは親目線というより運営者目線になってしまうけど、意識しているのは、ほんとに、子どもたちにはなるべく好きなことをしてもらいたい。進行としては、「次は〇〇をとりにいくから移動するよ〜」とかやらなきゃいけないけど、本当は別に言うこと聞かなくてもいいよ〜、と思ってる節がある(笑)。さっきの話だと、うちの子はみんなと一緒に畑に移動することもなく、「う〜ん、今はいいや!」みたいな感じ。そういうのを見ていたら、あ〜、この子は今は野菜をとるよりもとにかくここで土と戯れている方が楽しそうだなって。「早く行くよ!」とか絶対に言っちゃいけないなあと思って。
農いく!をやっていると、そういう場面が毎回ある。この間は、シリーズ体験で大豆を収穫する日に、まだ小さな女の子が、大豆の収穫は力がいるから無理だって自分で気づいたのか、線路沿いの木に生えた木の実をひたすら集めることを1人でやっていて。そこに他の大きい子が自然と関わって異年齢的な遊びが生まれたりね。なるべくそういう場面を見落としたくないなと思ってやっています。右に倣えっていうのは簡単だから…。
多分、普通の収穫体験ってそうなりそうじゃない。みんなで掘りましょう〜ってやって、掘っておしまいです、みたいな。分からないけれど…農いく!がやりたいことはそうじゃないんだよね、多分。
そうですね。普段は私も、「もう、ご飯作ったんだから食べてよ〜」とか「お風呂入る時間なんだから入ろうよ〜」とかばっかりなんですけど、結局親が決めたプログラムになんとなく沿った生活が繰り広げられるわけですよね。
でも農いく!は、畑に行ってみないと土から何が出てくるかわからないのは親も同じだし。じゃあみんな分からないから、子どもが見つけたことはみんなで一緒に楽しんじゃおうっていうのが、理想に近い。
親もだんだん開かれていく雰囲気も感じますしね。例えば、せっかく帰ろうとして長靴から靴に履き替えた後にまた畑に入っちゃう子とか、親は最初「アァ〜!」ってなるんだけど、結局そのまま遊ばせて最終的には親も楽しそうに帰っていくみたいな。見ていて、こういうのいいな〜って。
最高だね、それ。
そういうゆったりとした気持ちで過ごせる場が少ない気がするし、都会で子育てしていると、そういう意識になんとなく持っていきにくいなって自分自身感じることが多くて。だから、農いく!を通して今後そういう働きもしていけたらいいなあと思いますね。